2025/9/21
カエルさん
ガードレールをまたぎ、坂を下っていく。
そこには人目の届かない浅い湖があった。
水面に朝の光が反射して、きらきらと輝いている。
「ここなら……だれにも見られないし……水で手も洗える……」
ななみは小さくつぶやきながら、膝まで水に入った。
ちょうど目の前に、ひとつの石があった。
「……あれに、かけよう……」
そう思って近づくと――
ぴょこっ。
石の上に、小さなカエルが飛び乗った。
黒い瞳でじっと、ななみを見ている。
「……あれ……カエルさんも、見たいの……?」
頬を赤くしながら、小声でつぶやく。
尿意はもう限界。
「……っ、もう……出ちゃいそう……」
水音と鳥の声だけが響く湖畔で、ななみの鼓動はどんどん早くなっていった。
2025/9/8
早朝おさんぽ
まだ空は青白く、鳥の声だけが響く時間。
通学路も商店街も、人影はほとんどなかった。
――服は着ていない。
「……1週ぐらいなら、だれにも見られないよね……」
小さく呟きながら、冷たい空気に肌を晒した。
アスファルトに裸足の足音が響く。
ぺた、ぺた……
胸を腕で隠しながら、住宅街を歩く。
朝露でしっとり濡れた風が肌を撫で、ぞくぞくと震えが走る。
(は、はずかしい……でも……っ)
心臓が速く打つ。
誰にも見られていないはずなのに――
「見られてしまうかも」という想像だけで、足は早まっていく。